Into Your Eyes をわたしはこう読み解きました

Into Your Eyes について、いまさらですが、個人的にこうやって歌詞を読み解いています、という自分用のまとめです。解釈はいくらでもできるけど、こういう読み方もあるよね、というやつです。

※ちなみに、書いていて考え方を変えたので、まだ自分の中でもちょっと腑に落ちない部分はあります。

 

結論から書いてしまえば、【既婚者を装った男性と、おそらく既婚者の女性による、許されない関係】を描いていると思っています。

 


主人公は男性で、基本的には男性目線で書かれていると思っています。

しかし、フォロイーさんのツイートを見てわたしも知ったのですが、最後のサビだけは、それまでのサビの冒頭英語部分に付いていた、[girl]という呼びかけがありません。そして個人的に、初めて聞いたときから引っかかっていたのですが、一般的には[ルージュを残す]動作の主体は女性です。これにより、他はすべて男性目線で書かれているのに、ここだけはそうではないと思っています。

では、誰の視点なのか。you は誰を示すのか。

ちょっとひねった考え方ですが、歌詞全体を見たときに、身体を重ねていることが明確に分かるのは最後のサビだけです。また、それまではずっと相手の女性に対する呼びかけとして[girl]が付き、1 サビも 2 サビも最初の英語詞の直後で、願望なのか希望なのか、主人公の心情が描かれています。

しかし、最後のサビだけは、呼びかけがないことに加えて、続く 2 行目は心情ではなく動作が描かれます。この動作は、主人公だけで完結するものではなく、相手がいて成り立つものです。

わたしは、この最後のサビにおける you は、[主人公の男性にとっての相手の女性]と、[相手の女性にとっての主人公の男性]の、両方を示すのではないかと考えます。お互いが相手に Look into していくのではないかと考えます。さらに歌詞は「首に残すルージュと過ち」と続きます。ルージュを残すのは前述のように女性です。そしてルージュと対になるものとして、過ちという表現があります。明示されていませんが、おそらく男性が首筋に残したキスマークでしょう。男性も女性も共に相手に痕跡を残しています。これらにより、最後のサビだけ呼びかけがないのは、両者のことを表しているからと考えます。

 

ただし、最後の 3 行はお互いのことを言っているのではなく、ここも他と同じように主人公の視点だと考えます。明示的に[君]の表記が変わっていたのであれば*1、ここも主人公とは別の視点だと思いましたが、他と同様に 2 人称に使われる[君]という表現があまりにも色濃く主張するので、ここも主人公目線だと推測しています。

楽曲全体のキーとなる、「今日も君の寂しげな瞳がうつす指のウソ」の解釈として、[君]は相手の女性、[指のウソ]は主人公の指にある薬指の指輪が実はウソ、と考えます。「うつす」とあるので実態があるはずです。しかしこれはウソである。つまりは、男性は結婚指輪をしているものの、実はこれはウソの指輪であり、実際は既婚者ではなく、相手に対して既婚者であると偽っている、と読み解いています。

 

個人的に考える、関係性の解釈は以上です。「登場人物全員が切ない」と、要所要所で淳太くんは言っていますが、どの解釈をしてもそうだなと思います。恋に溺れる者、許されざる関係を築いてしまう者、そして直接登場するわけではないものの存在が仄めかされる者(このひとの場合は「切ない」と捉えるかは紙一重ですが、このひとをも「切ない」とするあたりが、男性なのでしょうね…)、幸せには誰もなれない。とりわけ主人公の男性は、いくつものウソを重ねて、本心を言えずにいます。それでもこの男性は、この関係をやめられないんだな、と思っています。

 


結論から持ってきたから、もうこれで言いたいことは大体言い終わったのですが、もうちょっと書きます。長いです。

 

 

Into Your Eyes

タイトルです。これがなかなかうまくできていて、仮にこれが、In Your Eyes であった場合には、点として[相手の瞳に映る]という意味だったと思います。In ではなく Into にすることで、動きを伴うことになります。タイトルだけが先行して開示されていたときには、Into?と思っていましたが、歌詞を知ってから、そりゃあこの歌詞なら Into だわ!動きを伴って入っていくわ!!!と感動しました(12/22 のド深夜のことです。もはや IYE 初披露の日付までソラで言えます)。

直訳すると、[相手の瞳に映りこんでいく]、[視界により入っていく]、といったイメージです。単に相手の瞳に映るだけでなく、より近づいて、相手との距離をつめていくことを思わせます。さらには、歌詞の中に「瞳に溺れてく」というフレーズがありますが、これがタイトルと合わせられて、非常にうまくできていると思っています。曲を全て聴いてタイトルに戻ると、相手の瞳に映っていくだけではなく、そのままその瞳に、恋に溺れていく様子を示している気もします。

 

何気ない 平日の夜
約束もないけど こうして会えたね Alright

[平日の夜に会う]、[約束は特にしていない]、[終電で帰る]、どれも不倫か二股を連想させますね。約束をしないのは痕跡を残さないためでしょうか。

この、[約束をしていなくても会えた]という描写は、読み込んでいくと、この男性が相手との心理的な繋がりがあることを悦ぶ、ある種夢見がちな思考が透けてみえる気がします。ありふれた言い方ですが、運命と呼ばれるものも感じていそうです。現実的に考えると、何らかの形で約束をするでしょうし、こんな偶然みたいなものに賭けるなんて、相手に相当惚れ込んでいるのでしょう。しかし、この先に恋に溺れていくことを思うと、まだこうして約束もなく会えることを素直に喜んでいた頃は、幸せだった頃かもしれないと、そんなことも考えます。

こういった関係なら、待ち合わせ場所はバーとかそういう場所でもいいのではないかと思いますが、カフェというところがミソなのでしょう。カフェという場所は、1 人でふらっと入って 1 人で時間を過ごせる場所です。相手に会えなかった場合でも、コーヒーを飲んで家に帰ることができる。お酒を飲んでいないので、仕事で遅くなったなどとなんとでも言い繕えます。

また、バーよりもカフェのほうが聞き手の身近にあることが多く、曲始まってすぐに聞き手が歌詞の世界にすっと入りやすいように作り込んであるのではないかとも考えます。

 

苦いコーヒー 飲めないくせに
「私もそれで」と 笑う

まるで 子供みたい
そっと 君を引き寄せ
「嘘つきめ」と抱きしめる

会報の鼎談にて、歌詞についてツインに読み込まれ且つその場で感想を言われていますが、「かわいいよね淳太(笑)」はここだろうなと思っています。かわいいなあ…。

 

Look into your eyes, girl
何も言わないで
Look into your eyes, girl
その笑顔は誰にも見せないで
鳴った 電話に 遮られた時間の
続きを 探そうか?

女性に定まったパートナーがいるだろうと推測させた部分の 1 つです。彼女が笑顔を見せるひとが、主人公の男性以外にもいることが分かります。また、かかってきた電話に出ないといけない相手がいることも分かります。

拡大解釈ではありますが、主人公とのこの関係性について、はっきりさせることも、今後どうするかも何も言わないでいてほしいのではないでしょうか。電話がかかってくることで、急に現実に戻されてしまうものの、電話を切ったあとは何事もなかったかのように 2 人の空気を続けたい。そんな心情が読み解けます。

 

Oh 君へと 近づくほど
友達のフリがうまくなってく Oh no baby
ワガママだって 愛せるけど
本当の 気持ちは 言えない

この部分からは、おそらく最初は男性は割り切って関係をスタートさせたのだと考えます。これは本気なんかじゃない。友達とのただの火遊び。当初はそう捉えていたのではないでしょうか。はじめはそんなことを自分に言い聞かせる必要すらなかったと思います。

それが次第に心理的にも相手に近づいて、この恋に溺れて、相手に対して本気になってしまった。主人公である男性の想いがより強くなっていくことが窺えます。友達の枠から多少外れたワガママも許せてしまうほど、相手への愛情が募ってしまった。でもそんなつもりで始めた関係ではないので、いまさら相手に本音は言えず、本音を隠して[友達のフリ]を演じているのではないかと推測します。


歌詞の書き手が直接表現しているという意味で、コンサートの演出もこの曲を紐解く鍵の 1 つになっている気がします。コンサート中、この部分で淳太くんはベッドに腰掛けてあたまを抱えていますが、内心で葛藤する主人公を表しているのではないかと思います。

 

Yeah... Hey girl... Come here...
Woo... Something I wanna say
You know, Listen up

これは冒頭ですが、英語部分は割とストレートに、主人公の心の内を書いている、書き分けているような気がします。本当は伝えたいことがある。聞いてほしいことがある。そう思っているのに、今日も何も言えずに言葉を飲み込んでいる男性の姿が垣間見えます。果たして伝えたい言葉とはなんなのか。言うまでもないと思います。

 

振り返りざま そっと 笑う 君に
「またいつか」と手を振った

Look into your eyes, girl
どこにも行かないで
Look into your eyes, girl
その言葉を静かに飲み込んで
最終 電車に 乗り込んでいく君の
背中を 見ていた

ここからも女性に定まったパートナーがいるだろうと推測しました。終電で帰る必要がある。帰らないといけない。それは相手が家で待っているからではないでしょうか。ここで気になったのは、主人公は相手が終電で帰るところを見送りますが、その後は彼はどうやって帰宅するのでしょうか。終電の時間が違うのか?その可能性もありますが、女性とは逆に、男性は終電で帰らなくてもいいのではないかと思います。時間を気にせず、帰宅手段も気にすることなくいられるのではないでしょうか。

また、1 番では、内心は別としてまだドライに関係を築いていたようにも見えます。しかし、コンサートでの演出をみて、終電に乗り込む背中を見送る表情はまったくドライではなく、むしろ恋に溺れているのがわかります。もう今までには戻れない。そんな表情を淳太くんはしていました。

 


突然ですが、この「またいつか」は、あまりにも漠然としていませんか???


平日に明確な約束がなくても会えるような関係なのに、別れるときの挨拶が「またいつか」???文字数や全体の雰囲気で、使用する表現が制限されるとはいえ、「またいつか」とはなんだか離別の言葉のように聞こえるのではないかと、読み込めば読み込むほど疑問が残りました。

デジタル大辞泉
いつ‐か【何=時か】[副]
① 未来の不定の時を表す。そのうちに。「何時かお会いしたい」「あの国には何時か行ってみたい」

大辞林 第三版
いつか【何時か】[副]
はっきりその時と指定できない不定の時や漠然とした時などを表す。
② 未来のある時。そのうち。いずれ。 「 -会えるだろう」 「 -解決する」

 辞書を確認すると、[いつか]という表現は、漠然としているものの、一応[次]を想定します。しかし、[カフェで待ち合わせ]や[終電で帰る]などと情景が浮かぶ描写をしているのに、この状況で、「またいつか」というフレーズは、あまりにも文学的というか、非現実的というか、実際は出てこないのではないかと思わずにはいられませんでした。少々軽くなりますが、音数を合わせて「また今度」や「それじゃあね」といった表現でも良かったのではないでしょうか。現実感が強くなりすぎるものの、「また今度」ならば、聞き手が引っかかりを覚えることなく、次を予感させる表現になった気がします。それに対して、実際に使われた「またいつか」は、次が不確定すぎて浮いているように感じます。

それでは、逆になにか意図があるのでしょうか。

これはかなり極端な読み解き方なのですが、わたしは、主人公の男性はここでこの関係を終わらせようとしたのではないかと思います。[「またいつか」と手を振った]のと[終電に乗り込むむ背中を見ていた]のは同じタイミングだったと考えます。自分の気持ちを言えないほどに相手を愛してしまった。戻れなくなる前にこれで幕を引こうとしたのかもしれません。

ただし、この 2 人は平日にカフェで会えるくらいに生活圏が被っています。この先まったく会わないなんてことはおそらくありません。だけどこれからは、意識的にカフェに足を運ぶのではなく、次に彼女に会うのは本当に偶然に「いつか」出会うときだけ。そんなつもりでかけた言葉だとしたら、「またいつか」もありかなと思います。

 

未練を残しつつも 2 サビで離別を決めたにも関わらず、Dメロ以降は、本当はもう会わないつもりだったのに、それができなくて恋に溺れて堕ちていったことを示すと考えています。

また、D メロでは「I can't stop」という表現を用いているのに、最後のサビの応酬ではこれが「Won't stop」となっているあたりで、主人公の男性は自らを律することをやめた様子が見えると思っています(ざっくりですがここでは、前者ではやめられないことを自覚している、後者は自覚の上でやめない、みたいなニュアンスでわたしは捉えています)。

 

Get down, Cuz I can't stop
瞳に溺れてく

Look into your eyes, girl
もう何も聞かないで
Look into your eyes, girl
許された 時間を壊さないで
Won't stop 君を
愛すほどに Lost my way
濡れたシャツもTake off

ゆっくりと両目を塞ぎ、その後首を押さえてベッドに倒れこむ演出をしてみせた中間淳太という人の真骨頂がここだったと思います。心理的な距離をつめるだけではなく、物理的に近づいて相手の瞳を覗き込んで、そこに映るのは自分だけにする。それがいつのまにか相手の瞳に溺れているのは自分だった。いろんなものが見えなくなってしまい、とうとう自ら目を塞いで溺れていく。深みにはまって道を踏み外すことを自ら選んだ男性の様子を表しているようにも見えました。

 

Look into your eyes
肌を重ねDancing
Look into your eyes
首に残すルージュと過ち
今日も 君の
寂しげな瞳が
うつす指のウソ

この最後の部分が肝であり、歌詞を考える上でまずここが浮かんだ、と淳太くんは言っていましたが、正直にいうと、ここの段落が 1 番の謎でした。

ここ関しては、最初に書いたとおりです。繰り返される「Look into your eyes」のフレーズに呼びかけの[girl]がつかないのは、男性と女性の両者によるものであるから。you は[主人公の男性にとっての相手の女性]と、[相手の女性にとっての主人公の男性]の両方を示す。関係を終わらせようとしたもののそれができず、この 2 人は身体を重ね、それまでは残さなかった痕跡をここでは残します。しかし彼にはさらに秘密があり、それは彼女に明かされていない。最後を読むと意味がわかると淳太くんは言っていましたが、明確な回答が提示されない中、わたしは、男性が女性を偽っていると解釈しました。

 

男性が偽りの指輪をする理由はいくつも考えられますが、最初はほんの火遊びのつもりで始めたのであれば、彼女への心理的な負い目を軽減させるためだったかもしれません。[フリーの男性と浮気]ではなく、[お互いに既婚者で、お互いにパートナーがいることを踏まえた上での浮気]と見せることで、お互いに罪の程度は同じだと思わせたのではないでしょうか。これが後に、男性本人を苦しめます。彼女に本気になってしまい、おそらく彼女の気持ちも彼にある。彼女を奪おうと思えばできるのでしょう。しかし、最初に自らが吐いたウソが、逆に自らをも縛ることになってしまいます。


歌詞のこの部分では、おそらく男性は女性のことを見ていますが、見られている女性は男性の指輪を見ているのでしょう。身体を重ねたものの幸せではなく、むしろ身体を重ねたからこそ余計に辛くなってしまった。だから最後は、お互いを見つめあうのではなく、彼女は[彼には自分とは違うパートナーがいる]ことを示す指輪を、いつも以上に寂しく見ているのではないかと思います。そんな彼女を見つめる男性もまた、偽りを打ち明けることができずに、おそらく彼女同様に寂しい目をしているのではないか、そう推測します。この、最後に視線が交わらない点も踏まえると、Into Your Eyes というタイトルが、より深い意味をもつようになる、そんな解釈もできるのではないでしょうか。